安達ロベルト×Gallery Camellia 

写真講座「光の時」

20期受講生展覧会 ”時間旅行”

 

2022年10月20日(木)~10月29日(土)

10月26日(水)休廊

12:00‐19:00 最終日17:00まで

 

安達ロベルトさんを講師に、2015年より続いております写真講座は現在22期目を迎えております。

 

今展は、その写真講座でメモリアルな20期の受講生たちの展覧会です。

2020年、新型ウィルスが世界で猛威をふるい、大切なひとたちとも物理的に距離ができてしまいましたが、インターネット環境の充実で、オンラインでの交流はこれまで以上に容易となり、遠い近いにかかわらずリアルタイムで繋がることができました。この講座におきましても、受講生同志より深く近づけたように感じますし、そのことで自分自身をも深く掘り下げる時間となりました。

イギリス、ロシア、オーストラリア、フランス、大分、宮城、京都、兵庫、大阪、福島、山梨などなど、あちこちから受講くださり、距離だけでなく、写真やカメラへの先入観や、自分自身を縛っていた思い込みを、軽やかに超えることができた受講生も多かったと思います。講師の安達さん曰く”感性のヨガのような時間”と。20期では各自の原体験に潜る時間もあり、写真を通して時空を往来したのではないでしょうか。そんな20期生による「時間旅行」をテーマとした展覧会です。お楽しみいただけましたら幸いです。

 

写真講座にご興味をお持ちいただけましたらお気軽にお問い合わせください。 

 

 

以下は、出展者の作品画像とテキストです。実際の作品はぜひギャラリーでご高覧ください。

 

石原陽子

「緑雲」

 

これと思った風景は、その時にしか留まらない。つかまえたいと思って撮った一枚。ふと目の当たりにした、異空間のような美しい景色。時間旅行というタイトルを頭に眺めると、タイムトラベル中の背景にも見えてくる。講座の中で、光と影という言葉によく触れた印象があるが、日常は光と影によって当たり前を越えた美しさを見せることがある。そんな時、ここ(現在)にありながら時間旅行をしているのではないだろうか、と思った。

 

下記に写真を見ながら3分間で頭に浮かんだ言葉を追記します。

 

走る風。雲の落し物。まぶしい蛍が群れを成す。優しい影が風に吹かれて連なり、周りをロンドのようにダンス。手をつなぎ始めた影の髪が、風で揺れて音楽が流れる。ゆったりと雲に包まれて瞼を閉じる。空の先へ伸びていく背丈。良い香りが勢いのある風に運ばれてきて、私を包む。歩いて行こうか、あちらの囲いの向こうまで。ロンドの中に入れてもらおうか。光と影と空気に現われる綿あめをひとつ口に含もうと、親指と人差し指で雲をつまむ。甘くてメロン風味の豊かな味わいが口に流れる。

 

  

大江マリ子

「時間は振動し鳴動する」

 

光の時の講座中は、過去に遡り自身の過去の原体験をも紐解き、現在、そして未来へと思いを馳せながら、時間軸を行き来した感覚を覚えました。

 

漆黒の黒い中に在り、

時間は光となり、さざめきながら

時に稲妻のように暗闇を引き裂く

さまざまな幻影を伴いながら・・・そのような夢を見ました。

  

 

久保田厚子

「Shapes from ancient times thru present」

 

20万年前に火山の大爆発で生まれたカルデラ湖は、

数万年後一部が決壊して土砂が流れ出た。

岩は地を削り水が流れた。緩い傾斜の地に、渓流が現れた。

岩肌に地衣類が現れ、その周辺ににシダ類が生えた。

風に乗ってやってきた種は芽吹き、岩を覆う様に根を張った。

何度となくそこに強い水流が現れ、再び岩が地を削り木々が倒れる。

そしてまたその上に小さな命が現れる。

人々はその時々の景観を愛でるが

そこには長い長い時を経て積み重なる時間が現れる。

 

 


菅原雅人

「未来の記憶」

 

只々、川の流れをみていた。

子供の頃の景色とは違うはずだが、心は時を遡る。

 

そういえば、時間なんて存在しない、人が勝手に概念を与えただけだ。

なんてことを言っていた物理学者がいたなあ。あ、すでに思考が幼児化してる。

 

輝かしい未来と、薄れゆく過去。

それとも益々輝きを増す過去と、霞んで見えない未来。

 

  

 

鈴木純子

「Integration」 

 

バラが好きで、季節のたびに写真を撮る。

バラが光に照らされ、風が吹き抜ける風景は美しさと生命力に溢れている。

 

しかし撮った写真を見返してみれば、どれもあの瞬間に目にした光景とは

色も光も違ってみえる。

 

その違和感に私は、一つの決まった瞬間を紙の上に固定することを放棄する。

 

代わりに、

その写真が、現在と過去、未来を繋ぐ、時空を超える結節点となるようにと考えた。

 

あったかもしれない未来や、人知れず過ぎ去った過去、風景を

見る人の想い、想像に応えて映し出す、そんな写真となることを願う。

  

  

瀬野豊

「Rampart」

 

スリランカのGalleはヨーロッパ人が建設した城塞都市である。Galle城壁は1663年にヨーロッパの支配者により建設された。城壁内を漫ろ歩きしていると、それがあった。それは、寂れゆく流れの中にあって新たな自然を内包していた。

  

  


髙木雄介

時間旅行について

 

私はSFが好きなので時間旅行ができるならちょっと未来に行きたいと思いました。

SFっぽくなってきたなと感じるので、最近AI関連の技術の進化がとても気になっています。

 

話は変わりますが、最近、海外出張に行ってきました。

帰国後に身体が拘束され、ぽっかりと時間を余らせるような事態にも巻き込まれました。同時に、時差ぼけにも悩まされており自分の身体のままならさに愕然としました。移動と時間、という生物としての根幹にある行為/感覚に大きな振幅があった今日この頃でした。

 

今思えば、色々なことがありましたが、時間とともに全部流れていき、今となっては、まるで何事もなかったかのようにけろっとしているように感じます。

 

何気なく撮った写真データは、何事もなかったかのようにGoogleドライブに居座り、ただ存在していただけでしたが、

会期も近づきいよいよ焦りだした私は、それを見た瞬間、撮った瞬間の体の傾きやだるさ、空気のにおい、などが、否応なしに湧き上がってくる感覚に襲われました。

体のだるさや熱や寝不足のもうろうとした頭であっても、湧き上がってくる感覚は撮ったその時の感覚であったように感じました。

 

AIがプロンプトから画像や3Dデータを紡ぎだすのに似ているのかな、と思いました。

 

人間のような機械は、人間様がそんな単純なはずがない、みたいな否定で終わってしまう気がしますが、人間のようなソフトウェアであれば、十分に複雑であれば、実現できちゃうのではないのか、というような雰囲気が出てきている昨今はディストピア系のSFっぽくてちょっと好きです。

   

  

髙宮翼

「さかいめ」

 

 

箱根山麓からの撮影です。

撮影の直前まで雨がけっこう降り、

けれど、到着するとともに晴天に恵まれた、この一瞬をとらえました。

  

   

中村夏恵

「踊る少女 心の余裕」

 

私は春が好きだ

けれど 社会人になってから 春はとても忙しく あっという間に過ぎていくようになり 気付けば 何年も桜も楽しめていなかった

今春も忙しなく過ぎようとしていた時

親友からLINEが届く

「なっちゃん、桜を見に行こう!」

アクティブな親友の一言で 私たちは昭和記念公園へ向かった

こんなにちゃんと桜を見たのはいつぶりだろう

桜を見るために出かけるなんて久しくなかった

美しい桜に二人でワイワイしていた時

リボンをくるくるしながら歩く少女を見かける

なんて楽しそうなのだろう

自由なのだろう

そして まるで幼き頃の自分を見ているような気持ちになった

いつの間にか少女のような振る舞いはできなくなってしまった

けれど 少女のような心は 大人になった今でも必要かもしれない

春を楽しむ心の余裕 大人になっても必要であり大切なことだと感じた

  

「来春も一緒に桜を見に行こう!」

 

私は親友との約束をとても楽しみにしている  

  

   


成子祐子

「until the day」 

 

脳内の旅をする。 

 

現在。過去。予測だけの未来。 

不安、孤独、怒り、喪失....。交錯する脳内の記憶と戦う。不安定さと不確実さが渦巻く中を、

揺らぐ事なく立ち続ける術をさがす。 

 

その日まで、一つの生物として終わりのある旅は続く。

  

  

堀智美

「時間旅行 ―内なる旅への扉―」

 

コロナ禍になり、今までのように撮影ができなくなりました。誰にも会えず、外出もままならない、不自由に思えた時間は、意外にも私に心地よさを与えてくれました。今までいかに多くのものに捉われていたかに気づき、外界へと向いていた意識は、次第に自分自身の内面へと向かっていきました。たった独りで、小さな部屋で過ごす時間は、幼少期の私の居場所そのものでした。自分の身の回りにあるもので、自分がやってみたいと思うことに、ひたすら没入していたあの時間。出来栄えよりも、その過程を楽しみ尽くす。自由に、のびのびと。とても贅沢に。

 

そんなことを思い起こしていたら、また何かを生み出したいという気持ちが沸き上がってきました。私にとって、写真を撮ること、作品を創ることは、子どもの頃の遊びの延長なのだと気づきました。この内なる時間旅行は、私自身が一番大切にしていたものに気づく旅でした。今回の作品はただ楽しく、やりたいようにやることを体現したものです。ここ数年で、もっと写真を好きになれたことが嬉しいです。新しい扉を1つずつ開けて、自分自身を知る旅を続けていきたいなと思います。

 

 

  

 

望月クララ

「[ parallel ] series "N/P" より」     

 

コロナ以降、立て続く衝撃的なできごとに、

世間への認識の仕方が変化した。

真偽の見極めにくたびれ果てた末、

真実はひとつによらず、

世界が多層的であることを受け入れ始めた。

ひとはそれぞれに異なる世界を見て、異なる現実を生きている。

 

あなたは今、どの世界(レイヤー)を旅していますか?

 

 

 

"N/P" について

https://claramochizuki.com/np

 

手製本 "N/P"  について

限定100部 2,200円(税込)

https://claramochizuki.com/np-zine

 

望月クララ *** Clara Mochizuki

https://claramochizuki.com/

 

  


吉田夜永

「みどりいろの新聞によせて」

 

子どもの頃に見た絵本の絵にずっと心惹かれている。

 

森の中で動物たちが笑い合っている、とても美しい絵だった。

 

残念ながら廃刊になった絵本のようで、どう探しても見つからなかった。

 

あの絵の風景をずっと探している。

  

  

講師:安達ロベルト

「Time and Space」

 

8月にタイに行った。

3年ぶりの国際線飛行機は、タイムマシンのようだった。スワンナプーム空港を出た先には、過去でも未来でもなく、「異なる時空間」があった。

 

安達ロベルト

アーティスト/写真家/作曲家

www.robertadachi.com